叙景ゼロ番地

eastern youth 叙景ゼロ番地歌詞
1.グッドバイ

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

太陽に暈がかかっていた
歪んで水面に浮かんでいた
記号のような言葉だけが
次々と降り積もっていった
どうして涙が出るんだろう?
夕立、バラバラと爆ぜるように
靴音、バラバラと爆ぜるように
褪せて汚れたビルの壁
打ち捨てられた傘の骨
角のメシ屋の壁時計
アバヨ サヨナラ 午後三時

灯りは滲む 地は歪む
ぶつかり合って行き交う肩と肩
声は絶え間なく かしましく
チクショウ バカヤロウ
泣くもんかよ
下り電車の暗い窓
疲れて微かに開いた口
いつも遅れる腕時計
アバヨ サヨナラ 真夜中

夢だったのか?
嘘だったのか?
面影が濡れてゆく
涙は乾いてゆく
そこから
花を散らして風が吹く
兆して白む窓ガラス
見えぬ彼方で鳥が鳴く
アバヨ サヨナラ 夜明け前


2.目眩の街

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

歩き飽きた道をノロノロと
行き先なんかは決めてない
忘れかけてた横顔が
ふと浮かんで消えた

なにをどうしてきたのやら
今となっては遠すぎて
八月のスモッグの空の下
また振り出しに戻る

2012年 目眩の街
頭の上の環八雲
皮膚を伝って流れる汗
焼き付けられて震える影

愚かなヤツだと疎まれて
違いねえやと苦笑い
歩けば逃げ水は逃げてゆく
また追いかけて歩く

歩けば 日が暮れる
街並に 灯が点る
立ち止まり 歩き出す
立ち止まり 歩き出す

2012年 目眩の街


3.空に三日月 帰り道

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

雨上がりのアスファルトが
湿った記憶を呼んで
口笛で誤魔化している
一足毎、移り変わる心の風景を
宵闇が塗込めてゆく
絶妙にズレてる
完璧に引き剥がされてる
明らかに狂ってる
それでいてあまりにも
ナチュラルな穏やかさ

燃えているように見える地平が
夏の終わりを告げるサインを
空に向かって投げ返している

何も知らぬ 何も言わぬ
ただバスを待っている
次のバスを待っている
古い傷をシャツで隠し
呼吸を数えたり
爪先を眺めたり
関係は捩れてる
交信は閉ざされてる
とっくに壊れてる
それでいてあまりにも
ナチュラルな立ち姿

濡れているように見える路面が
ドブ川のように見える路面が
暗い明日を映し出している

いずれ消えるか 消えざるか
空に三日月 帰り道


4.呼んでいるのは誰なんだ?

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

僕を呼んでいるのは誰なんだ?
君を呼んでいるのは誰なんだ?
明日に待っているのは?
そこで待っているのは?

真っ暗闇で何も見えなかった
喉が乾いて何も言えなかった

眠れぬ夜は窓辺に
君の名前をそっと呼んで
聴こえるだろ?
聴こえるはずさ
見ろよ 空は広がっている

どこまでも空は広がっている
あの街まで空は広がっている
その窓まで空は広がっている
果てしなく空は広がって
悲しみを乗せた雲が
流れてゆく
流れてゆく

そうさ
どこまでも空は広がっている
あの街まで空は広がっている
その窓まで空は広がっている
あの街まで 窓まで


5.ひなげしが咲いている

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

合鍵を持ってる
扉は見つからない
探し倦ねて汗ばんでいる
朝の陽を浴びながら
ひなげしが咲いている
突っ立って全ての問いに答えながら
そこで
今を生きている
独りぼっちで

雷鳴が近付いて
また空が泣き出した
屋根が歌えば
街の色が滲む
そこで
夜を待っている
傘に隠れて

腕時計の針が規則的に回る
やって来る 去ってゆく
突っ立って待っている
待っているふりをして
立っているだけ
突っ立っているだけ

合鍵は錆びてる
鍵穴は見つからない
ひなげしが咲いている
時計の針が回る
そこで
今を生きている
今を生きている
明日を待っている
突っ立っている


6.残像都市と私

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

信号が変わる 人が押し寄せる
見事に擦れ違ってゆく
電車が滑り込む 人が押し寄せる
素早く入れ替わってゆく

さっきの人の背中も影も
三つ数えたら見えなくなる
ラララララララ
入り交じって色が混じってゆく
やがて灰色になる

家をブッ壊す 空き地が現れる
一瞬空が広くなる
クレーンがブッ立つ 人が押し寄せる
街の顔が変わる

あの日の街の 地図も景色も
三日と経たずに忘れちまう
ラララララララ
道が変わって顔が変わってゆく
やがて違う街になる

私の影だけが取り残されてゆく


7.長い登り坂

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

土煙を上げて明け暮れが
軋む音を立ててこの日々が

長い登り坂
立ち止まり仰ぎ見る空
泣いちまえ 泣いちまえ 月明かり
思い出せぬ歌 遠い街
なんでもねえ なんでもねえ 星が降る
ゆっくり ゆっくり 坂を登る

夜明けには再び兆すだろう
暗く澱む闇に架かる虹が
静かに現れるだろう


8.地図のない旅

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

背負っているその荷物が何であれ
持っているその力が何であれ
やるしかねえ いつだって やるしかねえんだ
行くしかねえ いつだって 行くしかねえんだ

遠く稲妻走る 嵐が来る
猛スピードで雲が流れる

約束は何一つ為されていない
確証は何一つ得られていない
やるしかねえ いつだって やるしかねえんだ
行くしかねえ いつだって 行くしかねえんだ

いつか心に灯した小さな炎で
迷い道を照らしながら歩くんだ

一歩目は躓く足
二歩目には挫く足
雨に打たれて
風に吹かれて
一歩目は躓く足
二歩目には挫く足
三歩目を諦めるな
足踏み鳴らせ
地図のない旅
傷だらけの旅

地図のない旅
果てしない旅
傷だらけの旅


9.驢馬の素描

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

描かれた自画像は酷く歪んでいた
描き損じばかり足の踏み場もない部屋
窓に映る姿が痩せた驢馬のようで
俯いてカーテンを静かに閉めてから
居眠り

目を覚まして、それから、

夕焼けを追いかけてゆく
朝焼けを携えてゆく
昼でもなく夜でもない
お終いと始まりの繋がりを
破り捨てた自画像が
別の顔を作り出してゆく

夕焼けを追いかけてゆく
朝焼けを携えてゆく
昼でもなく夜でもない
お終いと始まりの繋がりを
破り捨てた自画像が
別の顔を作り出して
破り捨てた昨日が
新しい素描を描いてゆく


10.ゼロから全てが始まる

作詞:吉野寿
作曲:eastern youth

広げた手のひらを隅に翳す
翳した手のひらに何もない
何にもない
手を翳せば空には空ばかり
手のひらにも空にも何もない
カラッポだ それで全部だ

そして
ゼロから全てが始まる
ゼロから全てを始める

道は始めは土だった
岩だった 風荒ぶ荒野だったはずさ
言葉は始めは音だった
呻きだった 泣き叫ぶ声だったはずさ

東の山並みが朱に染まる
翳した手のひらを染めてゆく
染めてよく

道は始めは土だった
岩だった 風荒ぶ荒野だったはずさ
言葉は始めは音だった
呻きだった 泣き叫ぶ声だったはずさ
人間は始めは泥だった
水だった 蠢く悲しみだった
歌は始めは音だった
呻きだった 泣き叫ぶ声だったはずさ

ゼロから全てが始まる
ゼロから全てを始める